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あまりにリアルでなおかつ虚構のような海の数時間

 あまりにリアルでなおかつ虚構のような海の数時間、絶えず鳴る風の音。白波のアトランダムな行列からぼくは逃れた。記憶に残った映像は周囲がぼやけている。海にいじめられたあと、温かいお湯は本当に有り難かった。

 清水さんにもらったシャンパンなどで乾杯。数度のランと、ライディング、長時間のオペレーションで疲れたのだろう寝落ちしそうな松下。

 みなそれぞれ体力気力を消耗していた。島原ベース側にいた池田マッキーも「夜中じゅうFacebookで追跡していた」ので寝てない。

 東京でリハビリに懸命の努力を続けているArt-plex運営の要、長江も夜中にチェックをいれていた。ほかにも様々なひとが実は見ていてくれた。ありがたい。

 食事の後9時過ぎには寝床へ。自分のイビキでボクが寝られないかもしれないのを気にして同室の森岡は「ちょっとロビーへ」と出て行った。しかしぼくはすぐに眠ってしまったようだ。

 昨日の夕方から移動し続けて30時間ほど過ぎていた。

 翌朝の朝日は見事で、うそのように静かな海が島原外港には広がっていた。先発隊の野口、畑、松下は07:10発の阿蘇丸で熊本へ帰っていった。ぼくはそれを埠頭の先端で見送った。

 埠頭には釣り人が一人。

 3人もこちらをみて手を振っている。長い汽笛を残して去っていく不格好なフェリー。下を見るとぼくが飲んだコーヒーのカップが北風の残りに飛ばされて朝の港に漂っていた。きのうの自分をそこに重ね合わせてみた。いかにも軽い白いそれは朝日に照らされてふらふらと南に流されていった。

     おわり