西へ、月夜を走る

 

西へ、月夜を走る

 ドラマチックな満月のもと、撮影は間に合わないようだがブリーフィング開始。簡単に趣旨説明ほか。自己紹介、はじめて会うメンバーもいる。少しのぼったところにある徳応寺の広い境内からは遠くまで広がる夜が見えた。東は海、遠くの光は大分か、あるいは10数キロ向こうの四国佐田岬か。

 終わって、撮影隊がカメラを回す、が動きは止められない。そのまま石段をくだる。

 野口。森部長、畑、瀬井、ぼくでR-1を走る。予定より少し早い.23時45分「どっちかな?」「こっちだろう」でスタート。密書は畑がしょっている。まさに女忍者のようだ。密書入れは竹製で体に密着するもの、長さ太さもベストだ。渡辺の労作。艶があり雰囲気も文句無し。

 最初の5km.、暗い夜道を走る集団。トンネル内で人影、前方に撮影の森真一。カメラをもって走っている。冷える夜気。だがやがて体温が上がり汗が出始める。

 畑を中心に固まって走っていると森部長が集団から抜け、独走態勢で我々を引き離した、あまつさえ違うルートを通っている。仕事でもそうなんだろうか?ひととなりを知らないのであれだが不思議な縁ではある。

 まあハイエースの伴走もあるので心配はあまりいらない。

「あと1.6kmです」無線でハイエースより指示を受けている野口からアナウンス。

 やや予定より早くゴール。先行していた全員から「おつかれー」ハイタッチ。

 そこからB-2鶴崎高校まで15kmの森岡自転車に引き継ぎ。先行していた松下ライダー長のメカニックは適切で素早い。カーレースのピットイン内での動きを彷彿とさせる手さばきは見事だった。自転車をおろし、座席調整。渡辺らが『夜間走行ジャケット』や竹筒の密書を森岡に着用。

 ファーストライダー森岡はかなりのハイペース。左右と背中にシグナルライトをつけて疾走する姿は映画トロンの映像のよう。「全然ペース落ちないです」とゴリ中村が驚いている。

 信号無視してがむしゃらに飛ばすボクサー森岡の走りはのちに「森岡式」と呼ばれるようになる。深夜でもあり車両がほとんどないのでムリもない。

「ペース速いです、時速30以上出てます」とケイ。車内にどよめき。相棒のゴリ中村は運転。海沿いの長いカーブから商店がちらほらと見え出す街道へ。

 ゴールした森岡は清々しい表情だった。このとき「わいらいけるで」という感覚がチーム内に生じた。調子こかせたら強いチームなんだろう。

 鶴崎高校前には勝海舟と坂本龍馬の像があった。コースには彼らの足跡が150年たっても残っている。しかし語り継がれていくものに心を動かす時間は今はない。

 B-3野津原まで20kmの金城通称カネッシーはこれもそうとう速い。が信号はしっかり守っている。からだは今回のプレイヤーの中ではもっともごつい。が後半車道に堂々と切り込んでカーブする大胆な動きをみせた。(金城式)

「後方から車両きます、注意」と飛ばす金城にナビ長ケイより無線で指示がいく。早めの危険発見、追随とスタンバイがセクションごとに連動している。ときおり記録部隊が脇を過ぎていく。

 今思えばこの最初の3つのセクションが全体のペースを決めたような気がする。やや早めの先行逃げ切り型というべきか。ここでおくれるとあとでのリカバリーは難しかっただろう。野津原のコンビニに滑り込んだ金城。「30分貯金しました。」ハイエース内に再びどよめき(といっても5、6名)

 R-4国道412号線をランでいく桑本。歩幅が小さいが意外と速い。途中のコンビニでとまるごとに麺類などの炭水化物をスバヤクとっていた。やや登りの5km。ここもかなり時間を稼いだ。

 続いてR-5のラン隊長野口、はひぐらし茶やまで。途中の石畳を畑、瀬井、ぼくも走る。神社の脇から石の道が登っている。

 一瞬現代と過去が交錯する不思議な感覚がある。月が我々を照らし周囲はその分より暗く静まり返った森とうずくまったような家がところどころ。かつてこの道をわれわれのようにひたひたと急ぐ集団がきっとあったはずだ。

 


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